6. 落雷を抑制する仕組み

6. 落雷を抑制する仕組み

POINT
  1. 先行放電は、自然現象でありこれを防ぐことはできない。
  2. お迎え放電は、放電しにくくすることで防げる。
  3. お迎え放電が発生しなければ、放電路が形成されず、落雷を防げる。
  4. PDCE避雷針は一種のキャパシタであり、2つの電極が絶縁物を介して相対している。
    下の電極に、地面の電荷【プラス】が貯まると、上部の電極には逆の電荷【マイナス】が誘起される。
  5. 雷雲の底部は【マイナス】電荷が蓄えられているため、雷雲の底部と同じ極性の
    【マイナス】電荷をもつPDCED避雷針からは「お迎え放電」が発生し難い。

落雷と言えば輝く雷光と轟く雷鳴を連想するであろうが、雷鳴/雷光が発生してしまった時点では手遅れであり、この状態を変えることはできない。本製品は、このような状態に遷移する前の状態で、「お迎え放電」を抑制することで落雷を未然に防ぐことを目的にしている。

落雷の発生

落雷の発生は、雷雲の底部から複数の「先行放電」が同時発生的地面に向かって降りてくる。そのうちの大部分は、電荷の補給が止まり、空中で消えてしまう。このうち、雷雲からの電荷の補給が継続するものは地面に近づく所まで降りて来る。しかし、PDCEからは「お迎え放電」が上がらないので、この地面近くまで降りてきた「先行放電」もPDCEには導通できずに消えてしまう。「先行放電」は自然現象なので発生を防ぐことはできないが、地面からの「お迎え放電」を発生しなければ、このPDCEに落雷することはなくなる。

お迎え放電の抑制

お迎え放電を発生し難くするためには、電極の形状が大きく影響する。フランスの Pau 大学での放電設備での実験で確認したのは、針のような形状とシイタケの傘のような半球状の形状の比較では、圧倒的に針の方に放電し、半球状のシイタケ形避雷針には放電し難い事である。Pau大学の試験設備については、次回以降に解説するが地面の役割をするグランドプレートと雷雲の役割をする上部電極の間に電圧を加え、グランドプレート上に置いた被試験装置の挙動を観察する(図1)。

図1
図2

また、お迎え放電の元になる地面からの電流であるが、これも同じ高さの針型避雷針を直接接地して地面からのお迎え放電となる電流をそのまま流す場合と、避雷針と地面の間にキャパシタを設けて地面からの電流を流し難くした場合の比較では、これも地面からの電流を流れにくくした方が放電し難くなることを確認している(図2)。

 地面と避雷針の間にキャパシタなどを挿入したら、インピーダンスは無限大になり、接地の役割を果たさないであろうとの常識的な理解は承知しているが、これもある程度の電圧がかれば、キャパシタの内部で空気の絶縁破壊が発生し放電するので、接地が導通していないとの心配は無用である。

PDCEの構造は、この二つの要素を組み合わせているのでお迎え放電を発生させないというのが第一の落雷を抑制する仕組みである。

次の要素としては、PDCEに落雷すると表面が溶けてその痕跡がのこる。この痕跡は圧倒的に下部電極が多く、上部電極には少ない。この事実から、雷雲からのマイナス電荷が多いので、下部電極にはプラス帯電、上部電極にはマイナス帯電があると推察される。

雷雲【夏季雷の底部は負電荷】が接近すると地面には正電荷が誘起される。この正電荷は、引き下げ導線を伝わってPDCE避雷針の下部電極に貯まる。すると、絶縁物を介して上側電極には負電荷に分極する。雷雲の底部は負電荷なので雷雲とPDCE避雷針の上部電極の間では放電はしない。また、下部電極は、滑らかな曲面なのでお迎え放電も発生し難い形状になっている。PDCEに落雷し難い要素は複合的なものであるが、それぞれをPau大学での放電試験設備により確認している。

落雷の様子を観察すると、ギザギザの道を進むように上空から降りて来るが、何故、ギザギザかというと、放電の一回当たりの到達距離は最大で約100m程度で、100mを伝わると電荷が無くなり、また、上空の雷雲から補給されて次にジャンプすることを繰り返しながら降りてくる。

雷は射撃の名人か?

避雷針の先端を1ミリ・メートル角として,最後のジャンプで100m先から命中するであろうか?標的の大きさと距離の比で言うと 1mm : 100m( 100 x 1000mm ) で1:100,000 になる。遠くの標的を狙うのが得意なのは、例えばゴルゴ13のような狙撃手で、2km先の20cmの的に命中させることができる。標的と距離の比は 20cm : 2000 x 100cm で 1: 10,000 、落雷という自然現象が人間よりも10倍も良い精度とは考えにくい。とすると、避雷針に命中するには、落雷が一方的に避雷針落ちるのではなく、避雷針の先から「お迎え放電」が上昇し、これが上空から降りてくる「先行放電」と異電荷であるから互いに引き合い、3次元の空間で引きあって結ばれ、放電路が形成されるので、次に大きな電荷が上空から流れ落ちてくるのが「落雷」である。

イオンが集まる?

PDCEのDというのはスペイン語のDes-ionized で「イオンを消す」というような意味であり、当初、弊社も「消イオン型避雷針」との日本語名称で読んでいたが、「イオン云々」というのは怪しげで開発元のINT社にも納得できる説明もなく、この名称の使用は取り止めた。Pau大学での放電試験では、明らかに通常避雷針との差が出るが、その原因はイオン以外の事であると考える。半導体の内部であれば、イオンは自由に動けるが、静電気の電荷は空気中の雨粒や微粒子などに帯電して動くのであり、それが雷雲の強い雨風の中で100m先から集まるなどとの説明は、ただの推論であり、実測した訳ではない。そもそも自然現象が人間世界の都合の良い10進数の100mなどと扱いやすい数字で発生するという事もあり得ない。製品の開発元が言うのだから正しいであろうというのも必ずしもそうではない。発明家というのは、アイデアマンであるが理論家とは限らず、発明王エジソンのように、ほとんど教育など受けていなくても身の回りを改善するアイデアなど出るもので、理屈は後付けであることが多い。理論を考え抜き、理論を重ねた上での発明など非常に少なく、このPDCEもこのような形状に落ち着くまでの変遷を見ると最後はアイデアなのである。であるから、発明した人の論理的な説明が正しいとは限らないのである。