10. 落雷の発生メカニズム
- 落雷は突然始まるのではなく、放電が始まるまでに3つの段階がある
- この中で、自然に発生する部分については人間が制御することはできないが、「お迎え放電」を抑えれば、その後の段階が連続しないため、落雷の発生を止めることができる。
落雷は、突然発生するのではなく、発生するまでに次の3ステップがある。
- 雷雲底部から地面に向けて「先行放電」が降りてくる。
- 地面から「先行放電」に「お迎え放電」が向かい、結合すると放電路ができる
- できた放電路に雷雲の底部から電荷が流れる(平均的には3万アンペア程度で大きいと20万アンペア強に達するものもある)
このうち、1の先行放電の発生は自然現象であり防ぎきれない。しかし、2のお迎え放電を出にくくすれば、3には至らない。従来の避雷針が、何故「針」なのかといえば、尖ったものの先からの方が放電し易いために「お迎え放電」を発生させやすいように先を尖らせた「針」になっている。これにより落雷を誘導しているのが古典的な「避雷針」である。「雷」を「避ける」「針」と書くが、実際は雷を誘導しているのが「避雷針」である。落雷は単純な放電現象に見えるが、自然現象は奥深いものがあり、日本では、太平洋岸の夏の雷だけでなく日本海側の冬の雷がある。この冬の雷は、落雷の規模も強力なものがみられる。これは、世界でも珍しい落雷の一つで、上空に向かって放電するなど、その発生・発達の過程は未だ解明されていない部分も多い。
青天の霹靂(へきれき)などと呼ばれ、空が晴れている中で突然の落雷もあるが、電荷の無い場所に放電は起こりえない。付近の雷雲から一部流れてきた「雲」と認識できない程度の氷の粒が帯電して流れてきた結果の落雷であろうが、晴天の下でのいきなり数発の落雷は、ままある事で、これについては雷雨になっていないので生徒にクラブ活動の禁止などを指示できないまま、落雷事故に遭った例もある。
よく聞かれる質問として、「では、落ちなかった雷はどこに行ってしまうのか?」があります。これについては、元々、空中での放電が8割を占め、【対地放電(落雷】は2割程度なのです。放電は起きやすい所で発生するだけの事で、地面に放電し難ければ空中での放電が増えるだけの事と考えます。最初から地面に落ちるべくして降りて来るのではないのです。地面に降りる電荷の補給が上手くいかない経路での放電は空中で終わってしまう。
次に多いのが、「お前は自分勝手なヤツだ。自分にさえ落ちなければ、近所に落ちてもいいのか?」というご質問である。自分に落ちてきたものを相撲で言う「ウッチャリ」をかけて近隣に投げ飛ばす・・・そんなイメージのようであるが、それも実態と異なるのは、落雷として発生してしまったものがPDCEの直近にまで来て方向転換などすることはありえない。そのような方向転換をさせるエネルギーなどどこにない。時間軸で言えば、そのような稲妻が近づいてくるのを自分の近隣に誘導しないようにお迎えを出さないようにしているだけなのである。もし、近隣に落雷するようなことがあれば、それはその場所からお迎え放電が出ていただけの事で、自分の場所に取付けたPDCEとは関係の無いことである。