17. 適用事例
1) 茨城県牛久市の牛久大仏様
阿弥陀如来像の高さ120mは世界一のブロンズ像で、85mの高さは展望階で、胸・背中・両肩が東西南北の方向を向いて窓がある。落雷があっても雷電流は外側のブロンズを流れるため、中にいる参拝客は安全である。しかしながら、85mの高さに昇るエレベータの制御装置は、雷電流に影響されて機能停止になることが多い。すると、エレベータで降りて来られなくなる。館内の有線電話も壊れれば、携帯電話もブロンズでシールドされた内部からは通じない。そのような事態が発生しないようにとのリスク管理の観点でPDCEを取り付けられた。
2)海上保安庁 灯台
日本海を望むこの灯台は、海面からの高度が120m、明かりを灯すだけでなく風向風速などの気象データの収集もしている。ところが、海岸の絶壁にそびえるこの灯台には冬場には落雷が多く、落雷すると気象情報の収集ができなくなる。深い積雪に覆われた登山道の様な道を120mも上がって修理することはほぼ不可能である。このため、この夏に、冬場の雷対策の試験目的でPDCEを取付けた。これで一冬の間、落雷が防止できれば、雷で不能になる灯台の気象情報の収集の安定化が見込まれる。
3)地球深部探査船「ちきゅう」
深さ2,700mもの海底でボーリングを行い、その深さは海底から1万mに及ぶ。ボーリングしている間、海底と海上の「ちきゅう」の間のパイプを海流に流されることなく支え、常に、海底の掘削地点の真上に位置できるように電気駆動の大型モータがポッドの中に入り、どの方向にもプロペラを向けることができるので海流に逆らってどの場所にも留まることが可能である。その海底でのボーリングの期間中に、海上では雷雨が通り過ぎることもあり得る。海面から120mもの高さに突き出した塔【デリック】には落雷もある。漁船やヨットと異なり、鉄鋼船では雷電流に大きな抵抗を生じないので、木造船、FRP船よりは被害が少ないが流れる雷電流で船内の科学測定用の機器、航海用の機器などに被害が出ることもある。また、将来、メタンハイドレードの様な可燃物を扱う場合には危険も伴う。そこで、デリックの一番上にPDCEが取り付けられた。