[Vol.4 乗客]京王電鉄株式会社 鉄道事業本部 車両電気部様

「偶発的に発生する自然現象を相手にPDCEが何件の直撃雷を防いだのか?費用対効果を数値で示すことは難しい。しかし、PDCE導入前に多発していた直撃雷による重大な障害が、導入後には発生していないこともまた事実であります」

京王電鉄株式会社 鉄道事業本部 車両電気部様

多摩川橋梁を渡る京王5000系

【導入製品:PDCE-Junior Marine】

[京王電鉄株式会社]「日本一安全でサービスの良い鉄道」の実現に向け、お客さま目線での安全対策を講じる私鉄の雄。構造物の耐震補強や大雨対策、脱線事故に備えた訓練などソフト・ハード両面から鉄道インフラのレジリエンスを高める取組みを継続している。
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2013年ごろ、大きな落雷被害が多発

機器が火事に遭ったような被害に
 2013年ごろ、京王線において落雷、特に直撃雷(※)による機器の焼損など、復旧に時間がかかる大きな被害が多数発生いたしました。翌2014年から特に被害が多かった京王線のつつじヶ丘~東府中間と雷害による障害を受けやすい無線基地局を中心にPDCEの設置に着手しました。
(※)「直撃雷」とは、直接対象物に命中する雷のこと。雷の電流が電源線などの回線から侵入したものは「誘導雷」

10年かけ、総延長84.7kmの路線に826台のPDCEを設置
 2014年から2023年まで約10年かけて、京王線・井の頭線の全線にわたり、826台のPDCEを設置しております。2014年の設置開始以降は、直撃雷による重大な障害は発生しておりません。

京王5000系とPDCE (仙川付近)

直撃雷対策に有効な手立て

「架空地線」では防げなかった直撃雷
 信号・通信設備は、使用電圧の低い弱電機器が多く、沿線近隣への落雷による誘導雷サージの流入により故障いたします。架空地線はもとより、通信回路に避雷器や保安器を挿入し誘導雷対策は行っておりましたが、機器への直撃雷対策については有効な手立てがなく、対策に苦心している状態でした。

知名度の低かった「PDCE」を採用
 落雷という自然現象が相手なので100%防ぐ事は難しいものの、何か少しでも効果のある直撃雷対策がないか? 探していた所、落雷抑制システムズより「PDCE」のご提案を頂き、導入してみることになりました。

納品されたPDCE

聖蹟桜ヶ丘駅付近の設置現場。
工事ができる時間は、終電から始発までの4時間ほど

落ちなかった雷を数えることはできない

導入当初は、「偶然、落ちていないだけでは?」の声も
 雷という場所・時間が未定で偶発的に発生する自然現象が相手であるため、「PDCE」を導入しなかった場合、直撃雷の被害が何件あったか? を証明する事は事実上、不可能です。それはすなわち「PDCE」導入により何件の直撃雷を防いだのか? 費用対効果を数値で示す事が難しく、効果を疑問視する声があったことは確かです。

2013年まで起きていた重大な被害が、2014年からは発生していないという事実
 しかし「PDCE」導入前に多発していた直撃雷による障害が2014年のPDCE導入後には、直撃雷による重大な被害は発生していないのも、また事実であります。

めじろ台駅
西調布変電所防雷システム
多磨霊園1号柱
東府中1号柱

事後のバックアップ体制も大事だが、予防保全も大事

1日159万人の安全・安心・快適を担って
 京王電鉄の路線は、新宿起点の京王線と渋谷起点の井の頭線からなり、東京都西部を中心に1日約159万人(2023年度)の通勤通学旅客を輸送しております。ひと度、直撃雷による機器の焼損などの障害が発生すると復旧に多大な時間と労力がかかり、沿線住民の生活に甚大な被害を発生させてしまいます。

そもそも障害の発生を抑止する!
 当社では自然災害に対して、機器の予備品購入・管理等のハード面と、障害復旧訓練や技術訓練等のソフト面の両面で障害の早期復旧に備えておりますが、PDCEに関しては、そもそも障害の発生を抑止する予防保全という観点で導入させていただきました。

多摩川橋梁を渡る京王7000系

落雷抑制システムズに対する要望

 2014年の導入から10年が経過した初期導入のPDCEを対象に、2024年度上期には経年劣化診断を実施いたしました。
 この10年間、メンテナンスフリーということで特別な点検は実施しておりませんでしたが、診断の結果は特に問題なく構造的な強度も十分保たれておりました。
 しかし、どのような製品にも寿命はあり永久に使用できるものはありません。PDCEに関しましては、826台も導入を実施したため、将来の更新費用が大きな負担となる事が予想されます。落雷抑制システムズ様には、効果が同等でより軽量な廉価版の新製品を期待いたします。

 (写真提供:京王電鉄株式会社様 / 取材日:2024.08.02)