「若者を育成するこの場所から、絶対に落雷事故を出してはならない。避雷球は必要不可欠だと思っています」
一般社団法人MFA-B&S 様
J2水戸ホーリーホックの育成選手や地域チームが使用するアカデミーグラウンド「SISファシリティ」が3月18日に竣工した。事業主体は水戸ホーリーホックと水戸市サッカー協会。総工費3億5000万円のうち1億5000万円は「企業版ふるさと納税」を活用し集められた。水戸の未来のサッカーのために行政と粘り強く交渉し、地権者の理解を取り付け、企業から寄付を集めた(一社)MFA-B&Sの澁谷理事長にお話を伺いました。 【導入製品:PDCE-2020レガシーモデル(2基)】

照明柱の上部に避雷球が設置されている
[一般社団法人MFA-B&S]
水戸市のスポーツ振興・地域の活性化に向けて、株式会社フットボールクラブ水戸ホーリーホックと、一般社団法人水戸市サッカー協会が設立した団体。サッカーグランド整備を核としたスポーツ振興プロジェクトの第1弾として2021年より「SISファシリティ」の整備を進めてきた。
水戸ホーリーホックは、ケーズデンキスタジアム水戸をホームグラウンドに、アカデミー/スクールでは「人格的な成長」を重要課題に各年代の特長に応じた育成を図っている。
水戸ホーリーホック公式HP https://www.mito-hollyhock.net/
安全対策できるものがあるなら、入れよう
避雷“針”の危険は感じていた
北関東の中でも水戸は、雷が多い土地ではありませんでしたが、私もシニアチームでプレイしていて雷にヒヤヒヤすることがあります。グラウンドには避雷針が何本も立っていますが、避雷針を目がけて雷が落ちてきたら、プレイヤーが無傷でいられるとは思えません。Jリーグで、そして世界で活躍する選手の育成を担うグラウンドを新設するにあたり、雷対策は必須だと感じていました。最近では避雷針に代わるものがあるという話もサッカー関係者から耳にしていました。
宮崎での落雷事故、意識不明の重体
そんな矢先、まだ4月のことでしたが、宮崎市で高校のグラウンドに雷が落ち、練習試合をしていたサッカー部員が被害に遭ってしまった。18人が病院に搬送され、1人は意識不明の重体だといいます。こんな悲劇はあってはならない。避雷針に代わる対策を是が非でも導入しなければと思いました。どんなものがあるのか、費用はどれくらいか、確かな情報は得ていませんでしたが、何とか資金を工面してでも入れると決めました。
Jリーグ関係者からの情報提供
避雷針に代わるものは、すぐ見つけることができました。Jの関係者から、雷を寄せ付ける避雷針とは逆の発想のものがあり、NISSAN STUDIUMや三ツ沢グラウンドに既に導入されていると情報が入ったのです。それがPDCEで、すぐさま販売店に連絡を取りました。
照明柱の工事直前に
グラウンドの設計は終わっていましたが、販売店による現地調査により、グラウンドを守るため、照明柱2本の上にPDCEを取り付ける提案をいただきました。照明柱の工事はちょうどこれからというタイミングで、水戸ホーリーホックの関係者もPDCEの追加設置に全面的に賛同してくれました。
PDCEの設置設計





センターラインの延長線にあるナイター用LED照明柱 2本にPDCE-2020レガシーモデルが設置された

竣工式では水戸市長らがテープカットを行った

キックインセレモニーは水戸ホーリーホックユース 上山海翔選手をキーバーに、澁谷氏がキッカーを務めた
リース契約で資金面のハードルが下がった
取付工事費用までを含めたリース提案が
工期の終盤になり追加の費用が必要となりましたが、販売店の方よりリースをご提案いただき、導入に弾みがつきました。PDCEだけでなく取付工事費用まで全てをリース扱いにできるということで、願ってもないことでした。

念願であったアカデミー選手たちの育成拠点
4年越しの実現
水戸でもサッカーグラウンドは足りていません。わたくしたちが2021年に6月にグランド新設に向けプロジェクトを立ち上げたのは、アカデミー選手たちの成長の場であった那珂川河畔のホーリーピッチが、河川の水位上昇で2020年以降で順次河川工事が入ることが決まり、使えなくなってしまうためです。
一般の方々もサッカーに親しむことができる場の新設は、我々の悲願でした。プロジェクトの発足からグラウンド完成までに約4年。高橋靖水戸市長や、先祖伝来の地を提供してくださった地権者の皆さま、融資で力になってくれた金融機関さま、また、難しい設計をやり遂げてくださった設計事務所や施工会社の方々といった多くの方のご尽力により、この日を迎えることができました。
企業版ふるさと納税制度を活用
また、総工費3億5000万円の4割以上を「企業版ふるさと納税」でご協力いただきました。これは、地方創生プロジェクトに企業が寄附すると法人関係税が控除される仕組みです。「見る、する、支えるスポーツ」を掲げる水戸市の、人材育成のためのグランド整備に、20社以上の企業さまが賛同くださいました。
落雷事故に備えるのは大人の責務
世界中には71のプロリーグがあり、約1,300のクラブがありますが、環境整備にこれほど多くの方が力を貸してくださったことは稀有ではないでしょうか。皆さまのご協力を思えば、この場所で落雷事故などあってはならない。そして、Jリーグの育成施設としても、絶対に事故が起こってはならないと思っています。
もちろん、気象が激甚化する中で絶対の安全はなく、PDCEも100%でないことは承知しています。しかし、落雷の兆候があれば躊躇なく建物や車の中などに避難するという最善の策に次いで、次善の策まで用意しておく。これは、私たち大人の責務です。


【施設概要】 SISファシリティ
所在地:水戸市見川町2212-1
敷地面積:19,136.28㎡
人工芝サッカーコート1面(9,350㎡)
駐車場:60台(2,400㎡)
ナイター用LED照明:6基
*SISファシリティ
Synergy in Sports(スポーツにおける相乗効果) + Sports Facility(スポーツ施設)
を組み合わせた略称

(取材日:2025.03.18)