内部と外部とは建物の内と外です。高さが20mを超える建築物には避雷設備が取り付けられます。避雷設備は、雷を受ける「受雷部」、そこに流れる電流を地面にまで届けるための「引下げ導線」そして雷電流を地面に拡散するための「接地」と3つの部分から構成されます。外部雷対策は直撃雷、建物に落雷が直撃した際の対抗策です。
誘導雷の発生
落雷の直撃を受けた場合、それを直撃雷と呼びます。ところが、雷による被害は他にもあります。一番多いのが誘導雷です。これは、雷雲が上空に来ると、その直下の地面や電線にはプラス電荷が溜まります。雷雲の放電の中で一番多いのは雲と雲、あるいは雲の中での放電です。雷雲が来ると地面と地上の電線はプラスに帯電しますが、雲の底のマイナスとバランスしています。そこで、雲の中で放電が発生してしまうと、雲の中の電線に溜まっていたマイナス電荷のバランスを崩し、周囲に流れ込んできます。落雷が発生しなくても、雷雲が頭上に到来しただけで誘導雷による被害が発生することはあり得ます。この誘導雷による被害を防ぐには、耐雷トランス、保安器(SPD Surge Protection Device )などを用います。
耐雷トランンス
耐雷トランスは、電力線に用います。通常、トランスと言えば、電圧を上げたり、下げたりするために用い、トランス内部で一次側と二次側の巻き線の割合で、電圧の制御をしますが、この耐雷トランスについては巻き線の割合は1:1 で同じ、すなわち、入力が100Vであれば出力も100Vなのですが、その間が絶縁されていて、絶縁トランスとも呼ばれますが、一次側からのサージが二次側には伝わらないように絶縁されています。家庭用に使うには少し大きいので、家庭用にはあまり使われません。
保安器(SPD)
SPDですが、配線の中に組み入れるには電気工事としてプロの方に依頼せねばなりません。これは保護すべき対象の電源線に製品と並列に取付け、通常はインピーダンスが低いので保護対象に何の影響もしませんが、そこに大きな雷電流が流れてアース回路との間に大きな電位差が生じると、急激にインピーダンスが下がり、この雷電流をアースにバイパスする働きをします。もちろん、万能では無く、個々の製品はその仕様により性能には差がありますから、仕様以上の強い電流が流れた時には機能できませんが、それは仕方ない事です。家庭用には、電源を延長するOAタップに組み込まれた製品が家電量販店では売られていますので、手軽に誘導雷対策をする事が出来ます。弊社には、夏場、落雷対策についての問合せが寄せられますが、ビジネス用に比べれば費用的な負担で制限の多い家庭用では、いきなり弊社のPDCE避雷針を設置するよりは、OAタップにより誘導雷対策から始めることをお勧めしています。
直撃雷と誘導雷
直撃雷を受ければ、機器は炭化し真っ黒こげ、そこに至る電線も炭化してどこから交換すれば良いかも分かり難いほどの甚大な被害を受けますし、直撃雷で火災が発生することも多々あります。そのような大事故であれば復旧にも時間がかかり、社会システムの一部が壊れれば社会に大きな混乱を招きます。
それに比べれば、誘導雷による被害では、ケーブルが燃えるくらいのことはあっても、軽傷であればリセット・スィツチを押す、あるいはヒューズを交換するくらいの事で復旧します。
逆流雷
雷電流によるもう一つの被害に逆流雷があります。これは地面に落雷した時、あるいは避雷針に落雷して接地線を通って流れてきた雷電流が地面深くなどに流れ込まず、雷雨で冠水してずぶ濡れの地表を伝わって地面との交わる点から同心円的に広がって電流が流れます。大地の抵抗率によりますが、数百メートルに広がる事もあり、地面に置いた電気製品を壊し、そこから建物内に侵入することもあります。野球場で雷雨に遭い、雷雨が終わったので、グランドの水たまりなどの整備をしていた人に、数十メートル離れた雑木林に落雷した電流が逆流雷となってグランド整備をしていた方が重傷を負った例もあります。
逆流雷を防ぐには
避雷針はそこに雷電流を招くのですから、引下げ導線から地中深くに流れると期待したいのですが、上手く地下まで達するとは限りません。雷雨では地面が冠水する程濡れています。雷雨の時には、引下導体が地面と接している点で、そこから地表に流れてしまうことがあるからです。そのために開発された方法ですが、普通、鉄塔の一番上に設置されている避雷針に雷電流が流れれば、鉄塔自体で雷電流が分流します。地面では鉄塔の脚が4本で地面から支えているものが多く、4つの脚からそれぞれ地面に伝わっては対処し難いので、鉄塔の上で絶縁碍子の上に鉄塔とは絶縁して避雷針を取付けます。引下げ導線も鉄塔と接触しているとそこから雷電流が分流してしまいますから、特殊な高絶縁の不服を備えたケーブルで地面に下し、さらに地面から地中深くボーリングをして地中深く雷電流を放電する方法も開発されました。これであれば地表での被害は無くなりますが、問題はコストです。特殊ケーブルの価格も高価ですし、地面も十分な低い接地抵抗値となるまで、100m近くボーリングすることになります。工事に必要な経費というのは、工事を開始する前に全容を把握したいのですが、接地工事に限って言えば、工事をやってみるまで、分からないという難点があります。もちろん、工事の前に大地の抵抗率を測定しますが、目標の接地抵抗となるまで、何メートル掘れば達成できるのかが分からないというのは工事の見積もりには好ましくありません。
接地について
接地には色々な目的があり、用途によりそれぞれ異なります。アース(Easth)は、地球、(天空に対して)地、地表、地上、(海に対して) 陸地などを表す通り地面(地球)と接続する事です。電力配線に於いては感電防止のため、避雷設備に於いては落雷した電流を地面に拡散するために必要です。電子機器などでは、共通電位としてのグランドとも呼ばれ、この場合は必ずしも地面に接していなくても「容量型」の接地としてコンクリートの上に銅板を敷いたり、車の車体などで屋根に穴を開ける訳にはいきませんから、磁石による「マグネットアースシート」などもありますし、電子機器が小さいものであれば、植木鉢の土程度でも機能する場合もあります。
家電量販店の配線製品売場には、緑色の太めのケーブルと銅の棒から構成される「接地キット」なるものを見かけますが、避雷設備の設置には十分ではありません。避雷設備で使用されるのは直径10mm,長さ1000mmのアース棒を地面に数本、十分な接地抵抗となるまで数本打ち込み、用いるのは「鬼より線」と呼ばれる直径2mmの硬銅線を13~19本撚りを入れた接地線が世用いられます。