避雷針の原理

この文書のタイトルに「避雷針」としながら矛盾するようですが、法律的には避雷設備の中の受雷部というのが本名でして、規格の立場で言えば避雷針は死語であり、世の中で広く認知されているものの法律的には存在しません。

避雷針という名称とその実態は大きくかけ離れていて、その実態は「雷」を「避ける」「針」ではなく、「雷」を「被る」「針」で「被雷針」と書くのが漢字の意味からは正しく、これは雷をそこに誘導するものなのです。発明されたのは約270年前でエジソンの生まれる100年近く前ですから、まだ電気は実用化されず、落雷がいくらあっても当然、電気製品への影響などありませんでした。英語では単に、Lightning rod.あるいは発明したベンジャミン・フランクリンの名前からFranklin rod, 規格では Air Termination System と呼ばれるだけです。日本語にすると意味的にはかなり「盛った」名称で、原文には「避雷」という機能についての概念や「突針」などという形状についての概念もありません。原文に無い概念を日本語訳に持ち込んだ場合、それは「誤訳」とよばれますが、誤訳のまま広まってしまったのがこの避雷針という言葉です。

どこに落ちるか分からない落雷を犠牲的精神で自分の所に引き寄せるのですが、この機能を果たすために先端が針になっています。なぜ、避雷針が「針」であるのか?落雷はギザギザで上空から降りてきますが、何故、ギザギザかというと、放電の一回当たりの到達距離は約100m程度で、100mを伝わると電荷が無くなり、また、雷雲からから補給されて次にジャンプすることを繰り返しながら降りてきます。最後のジャンプで100m先から避雷針の先端を1ミリ・メートル角として,命中するでしょうか?標的の大きさと距離の比で言うと 1mm : 100m( 100 x 1000mm ) で1:100,000 になりますが、遠くの標的を狙うのが得意なのは、例えばゴルゴ13のような狙撃手ですが、2km先の20cmの的に命中させることができるそうで、標的と距離の比は 20cm : 2000 x 100cm で 1: 1,000 、落雷という自然現象が人間よりも100倍も良い精度であろうはずがありません。とすると、避雷針に命中するには、落雷が一方的に避雷針落ちるのではなく、避雷針の先から「お迎え放電」が上昇し、これが上空から降りてくる「先行放電」と3次元の空間で引きあって結ばれ、放電路が形成されるので、次に大きな電荷が上空から流れ落ちて来るのです。

 避雷針の原理に戻れば、なぜ、避雷針は「針」なのか?それは針のような尖った先は放電が放出し易いからで、それでこそ「避雷針」と呼ばれる理由です。その針から放出されるのが「お迎え放電」であり、【お迎え放電】があるからこそ、落雷がそこに誘導されるのです。

 避雷針に落ちた電流ですが、落雷は道路が冠水するような雨と共に発生しますから、いくらアース工事をきちんとしていても、雷電流は地中深くに流れ込むことなど無く、地表で拡散し地表に置いてある電気機器に侵入し、これに損害を与えたり、さらには電気配線に流れ込み、屋内の機器にまで損傷を与えることがあります。これを防ぐには、避雷針自体を高絶縁性の碍子の上に設置し雷電流も流せる特殊なケーブルで地中深く100m付近までボリーングをして地中深くに雷電流を導く「深埋接地」が必要になります。

 最近は、やっと落雷など呼び込まない方が良い、あるいは呼び込んだら危険であるという認識が広まってきています。例えば、水素ガスなどの課粘性ガスを扱う事業所では、ワザワザ、トラブルの種になる雷電流など呼び込むことはありませんし、監視カメラ、その他、電気設備を用いて観測をする施設などでも観測機器に悪影響を及ぼしかねない雷電流など呼び込まない方が良いのです。今や電気を用いない建物はなく、落雷を受ければビルの入退出管理、ビルの空調など、館内放送、火災報知器など建物自体が機能しなくなる恐れがあり、避雷針自体の在り方を見直す必要があります。

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